裁判での離婚
先日、弁護士会の法律相談センターで離婚相談を受けたのですが、夫が調停に出てこないことが確実だったため、離婚調停の申立てをしないで、離婚訴訟の提起をしました。
日本人の離婚は、協議離婚もできず、調停離婚もできなかったときに初めて裁判離婚ができるというのが原則なのですが、実は、調停をやっても意味がないことがわかっている場合は、いきなり裁判をすることも可能です。
その離婚請求事件では、夫は答弁書も出さず、弁護士も立てず、法廷にも出頭しなかったので第1回で結審するかなと思っていたのですが、裁判官は「防御の機会を保障しないといけませんから」といってもう1回だけ期日を指定し、その第2回期日にもなんら応答しなかったため、その1週間後に離婚を認める判決をくれました。
裁判離婚は、主文に「原告と被告とを離婚する」と書いてある判決をもらうだけではだめで、その判決が確定しないといけません。被告が控訴しないで2週間経つと確定します。
離婚自体はそれで成立するのですが、戸籍を変更するには役所に届出をしなくてはなりません。
法律は、確定してから10日以内に届け出てくれということになっているようです。
その後、原告は、裁判所に行って、判決書抄本(詳しい理由が省略してあるもの)と、判決確定証明書の交付申請書に収入印紙300円分を貼って提出し、その2つの書類をもらい、離婚届と一緒に区役所に提出することになります。その際の離婚届には、夫の署名押印と証人欄の記載は不要です。
夫婦の戸籍のある役所(役場)に離婚届を出す場合には戸籍謄本は不要ですが、それ以外の役所に離婚届を出す場合は、戸籍謄本を添付しなければなりません。
よって、判決が確定するまでの間に、戸籍謄本を取り寄せておくのがよいでしょう。あるいは、戸籍のある役所が遠いときは、離婚届(+判決書抄本+判決確定証明書)は郵送で提出するのもよいでしょう。
ちなみに、調停離婚や裁判離婚の手続き中にも、双方で離婚の合意ができたら、手続を取り下げて、協議離婚の形にすることがあります。その場合、裁判所でその場で離婚届に双方に記入+押印してもらい、当日中か翌日には提出してしまう、という感じになります。
この場合、もたもたしているうちに相手の気が変わって「やっぱり離婚やめた」などと言い出すと、離婚届の不受理申し出というのを役所に出されてしまうかもしれません。そうなると、協議離婚では離婚届そのものを受け付けてもらえなくなります。法律では、協議離婚の離婚届を受理する時点で、離婚する意思がなければ離婚は認められません。離婚届にハンコを押す時点の離婚意思ではダメなんです。
離婚届を受理してもらえないときは、調停や裁判手続のやり直しになってしまいます。
だから、とにかく相手の気が変わらないうちに急いで役所に出すことが大切です。
この点、調停離婚は、調停成立の時点で離婚自体は成立していますので、不受理申し出がでていてもそれと関係なく離婚届は受理されます。裁判離婚も判決が確定した時点で離婚が成立していますので、離婚届は受理されます。
※ 協議離婚では、離婚届の受理の時点で離婚が成立するので、離婚成立の時点が違うんですね。専門的には、人の身分関係に届出の時点で影響を及ぼす協議離婚の届出のことを、「創設的届出」といいます。成立した離婚を役所に報告して戸籍を変更してもらうだけの調停離婚・裁判離婚の届出は、「報告的届出」といいます。全く同じ用紙を使うんですけどね。