付郵便送達について

ある事件で訴えを提起したところ、裁判所の担当書記官から「被告が訴状を受け取らずに戻ってきました」と電話がありました。

そういうことはたまにあります。裁判所からの訴状の送達は、「特別送達」という特殊な郵便で書留と同じように郵便局員の手渡しで配達され、郵便局が送達報告書を裁判所に届けるのですが、不在の時は、配達員は不在連絡票を郵便受けに入れて郵便局に持って帰ってしまいます。保管期間中に取りに来なかった場合は、保管期間の最終日くらいにもう一度配達に来て、それでも不在だと、そのまま裁判所に戻されてしまいます。

そういう時のために民事訴訟法には送達をやり直す方法に関する規定がいくつもあって手当はされているのですが、実務上は、まず書記官から「被告の就業場所を知っていたら教えてください」といわれます。

しかし、勤務先なんて知らないよ、という場合は、訴えた弁護士としては、通常、2つの選択肢があります。
ひとつは、(1)もう一度特別送達を試みてもらう方法です。これは被告がたまたま留守だったりめんどくさがりだったり、忙しすぎたりして、受け取らず、かつ、取りにも行かないという場合に有効です。
もうひとつは(2)付郵便送達をしてもらう方法です。「付郵便送達」とは、書留郵便に付する送達、というもので、これがなされた場合は、実際に受け取ったか否かには関係なく、発送時に送達があったとみなされます。

付郵便送達は、受け取ったか否かに関係なく送達があったものとされるのですから、もし被告が受け取らなかったら裁判の日時も分からないまま裁判が行われ、被告は確実に負けてしまいます(欠席判決)。
そこで、付郵便送達をしてもらうためには、原告側の弁護士は、書記官に「付郵便送達の上申書」というのを提出し、「あそこに住んでるのは間違いないことを現地に行って見てきました」という内容の調査報告書を添付するというのが実務上の取り扱いです。
調査報告書は、電気メーターが回っているか、近所の人や大家さんからの聴き取り、現場写真、表札、郵便受け、自動車・自転車の保管状況などを記載し、実際に住んでいるのは確実だ、ということを裁判所に分かってもらう資料にします。

そのようにして、付郵便送達が行われて訴状が被告に届いたとみなされて、第1回口頭弁論期日が行われて被告欠席のまま勝訴しても、今度は判決がまた被告に送達されなければなりません。
調査報告書がすでに提出されているのですから、判決は最初から付郵便送達をすればよいのではないかなと思うのですが、民事訴訟法の規定ではそうはなっていないらしく、もう一度特別送達を試みて、だめだったら付郵便送達ということになるんだそうです。ややこしいですね。

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