誰も書かない個人情報保護法の疑問点4
Q4 36条 主務大臣の協力
3項において「この節」(報告・助言・勧告・命令)に限定して、主務大臣同士の緊密な連携と協力が義務づけられているが、認定する業務は、バラバラにやるということか。主務大臣のうち、たとえば国土交通大臣が認定したものを、別の主務大臣である環境大臣が取り消せるか。政令13条は、報告の徴収と助言について各主務大臣が権限を単独行使可能と規定するが、勧告と命令は単独行使できないということか。
A 指揮監督の関係に立たない行政庁相互の間では、国家意思の不統一を防ぐため、相互にその権限を尊重しなければならない(国家行政組織法15条、内閣法7条、内閣府設置法7条7項等参照)。したがって、2つ以上の行政庁の権限に関係する事項(共管事項)については、関係機関が協議して決定するのが原則であり、1つの行政庁が独断でした決定は、原則として無効である(『行政法要論(全訂第三版)』原田尚彦、P50)。本条は、かかる相互尊重の原則を前提に、これを確認したものである。
以上からすれば、36条3項が、各主務大臣に相互連絡・協力義務を課している範囲が第一節に限定されていることをもって第二節の認定個人情報保護団体の認定にかかる事務を各主務大臣が単独で行える根拠となるわけではない。認定個人情報保護団体の認定(37条)をすべき主務大臣が2つ以上あるときは、共同で認定しなければならないし、取り消す場合も共同でしなければならないと解される。
なお、政令13条は、共管事項の権限の共同行使の上記原則を報告の徴収(32条)及び助言(33条)が比較的軽微な手続きである点及びこれらの機動性の確保の観点から特に修正した規定である。したがって、勧告及び命令については、上記原則どおり、各主務大臣が単独で発することはできないと解される。