誰も書かない個人情報保護法の疑問点3

Q3 容易性は、一般人基準か本人に近い人が基準か。

近親者を基準にしたら事業者にとっては判断しにくくなるので、規制を受ける事業者の予測可能性の観点からは、一般人を基準に判断すべきとする考えもあり得る。しかしながら、この見解によると、仮に「整形手術を受けた個人のリスト 1 鈴木健 2…」というデータベースが流出した場合、一般人を基準にすると、鈴木健は全国的にあまりにも多すぎる。これは野球選手の鈴木健か、日本テレビの鈴木健かその他の鈴木健か分からないので識別は不能ということになる。他の情報と照合しようにも、一般人にはいかなる情報と照合すればいいのか見当もつかないであろう。結局、氏名まで明らかになったものが流出したにもかかわらず「個人情報」ではないということになる。流出した名前が珍しい名前であれば個人情報で、ありふれた名前であれば個人情報ではないという解釈は採るべきではない。
そこで、容易性は、「近親者であれば」他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものであると「一般人が認識し得べき」情報であるか否かを基準に判断されるべきである。こう解することによって、保護されるべき「個人情報」の範囲は広めになるが、あくまで一般人の認識を基準に判断するのであれば、事業者の予測可能性を奪うことにはならない。