公益通報の外部ヘルプラインの運用Q&A(2)
Q 通報者が「会社には名前を伏せておいてほしい」と要望した場合、外部ヘルプラインの弁護士からは、通報者の氏名を聞き出すことは絶対にできないのでしょうか。
A 外部ヘルプラインを担当する弁護士は、公益通報者の保護に対する信頼を維持することが非常に重要です。したがって、原則として、当該弁護士は、通報者の意向に反して通報者の氏名を会社に伝えてはならない立場にあります。
ただし、緊急性があり、弁護士が、通報者の氏名(その他通報者を特定し得る情報)を会社に伝えないと、人の生命・身体に危険が生じるような例外的な場合は、通報者の氏名等を会社に伝えることもあり得ると考えます。そのような場面においては弁護士が通報者の匿名性保持により守られるべき利益と、侵害されるおそれのある人の生命・身体という法益を比較衡量して、具体的に会社に何を伝えるべきかを判断することになります。
もっとも、私企業ではなく、官庁、地方公共団体や公営企業などの場合には、違った考慮が働くと考えられます。すなわち、適正な公務を確保するという利益のほうが、国民の奉仕者であるべき公務員である通報者の匿名性保持の利益よりも要保護性が高い場合が多いと思われます。結局は、通報対象事実の重大性と匿名性保持の利益との比較衡量である点は私企業と同じですが、結論は大いに異なり得るということだけ指摘しておきます。