個人情報保護法23条の限界

本人が承諾していない会員情報が日弁連や弁護士会のウェブサイトで公開されています。

個人情報保護法では、本人の同意のないまま第三者提供が許されるのは、23条に規定されている例外に該当する場合のみであり、日弁連や弁護士会の会則・会規は、「法令に基づく場合」(同法23条1項1号)には該当しないので、同法違反ではないかという問題が起きています。

この点については、いまのところ、私は、同法23条1項各号類推とするか、刑法35条を準用でもして、違法性阻却と解するほかないように思います。つまり、個人情報保護法における第三者提供の制限については、超法規的違法性阻却事由があるのだと思います。

同法23条1項各号は、すべて公益の観点から、例外を認めるものですが、この事案では、これとの類似性はあると思います。弁護士については公的資格制度を設けて参入制限をしており、自由な競争がかなり制限されていることや、公益活動義務を負うこと、弁護士会の自治が法令の規制の代替的な役割を果たしていることなどに照らすと、弁護士や弁護士会の立場は相当程度公的であり、プライバシーの保障が及ばない領域があるはずです。一般国民に弁護士情報を公開することによって、不足しがちな弁護士へのアクセスを十分に保障しようという趣旨からの情報公開であって、弁護士の事務所所在地やら、登録年やら、性別などは、弁護士の公的役割からすれば当然公開されなければなりません。弁護士の上記情報の公開についての各弁護士の同意の利益と一律公開による一般国民の利益では、圧倒的に後者が上でしょう。法の一般原則である法益権衡ということからは、当然に第三者提供の同意不要となるはずです。

そして、この事案で第三者提供の同意を不要とするための例外規定が個人情報保護法23条にない以上、23条1項各号類推などの方法で例外を認めざるを得ないでしょう。

ちなみに、M&Aなどの場面でのデューディリジェンス(相手先企業への第三者提供)についても、本人同意なしでこれを認める明文がありません(ディールが成立するか否かは決まっていないので事業承継の場合の規定を類推することもできません)。個人情報保護法が複雑でそれなりに練られた法律であるとはいえ全ての事象にうまく対応できるはずもありません。全ての事案で文理解釈から結論を導き出すことはできないことを認識した上で、法の趣旨に立ち返って事案ごとに結論を出すことが大事だと思います。

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